最後の宴を開こう。

彼の人を傷つけ、彼の人を慕い、彼の人を拒絶した私の最後の宴。



癒えない傷。
溢れる涙。
尽きぬ想い。
伝わらない願い。


全て自らが引き起こした事。


優しさをなくし、狂気の獣のと成り果てた己の
片隅に残っていた正気。


これを手放す前に 彼の人に…



傷は癒えない…
涸れ果てた涙の泉。
終わりを告げる想い…。


真の暗黒に流し込み、彼の人をこれ以上傷つけない為にも
己を貶めよう。


ガラクタの心。
軋む身体。

流れる命の河川を停止させる。
真っ赤な雫は地に還るだろう。


崩れ果てた心の代わりに機械の心臓を埋め込もう。
絶えた血の代わりにオイルを注ぎ込もう。
動きを拒絶する身体の代わりに鉄の骨を組み込み、
神経の代わりに回線を組み込もう。

余計な事を考える脳の代わりに、プログラムされた機械を入れよう。

人として、有るべき筈の優しさは全てプログラムに組み込まれた事だけを繰り返す。


誰も受け入れない。
誰も拒絶しない。

ただ動き、息だけをする。
時折、感情が湧いてしまうかもしれない。
けれどそれは予想外のエラー。


人に在らざる者となった私は、彼の人を傷つける事は無くなるだろうか?
彼の人だけじゃない…
人として在った時の大事な人たちを傷つける事は無くなるだろうか?

傷は痕となり機械の飾りとなる。
溢れていた涙は涸れ、ただ巡るオイルとなる。
想いは消え、ただ動くだけの機械の一部になる。



思考を止めて
鋼鉄の扉を閉じて
開く鍵は誰にも渡さない。


身体が錆びても、新しいオイルを流せばいいだけ。
プログラムが壊れたなら、新しいのを組み込めばいいだけ。
作り物の機械なんか、代わりはいくらでもいる。


何も心配する事は無い。
壊れたなら新しい機械と取り替えろ。
壊れた己はスクラップと成る。


ただ、それだけの事だ。


さぁ、戯言はここまでにして宴を開こうか。


血を撒き散らしながら臓腑を引きずり出せ
肉をからませたまま、薄桃の骨を叩き潰せ。
眼球を抉り取れ。
喉笛を食い破れ。


私という入れ物をこの世に残すな。
血の一滴すら残すな。


やがて、ただの残骸と成った私を焼き払うがいい。

煉獄の炎に焼かれながら、私は彼の人へ尽きぬ懺悔を繰り返すだろう。
聞き届けられる事の無い、罪に溺れた私の懺悔を。


そして宴は終焉を告げる。


彼の人を慕った記憶も、
溢れていた雫も、
届かぬ想いも、



全て、


消えうせよう…。












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