「愛してる」 貴方は私にそう、告げていた。 「愛してる」 私は貴方に、言葉を返していた。 『愛してる』 私は今、まるで違う人にこの言葉を捧げている。 同じ言葉、同じ意味合いの言葉。 ただ、壊れたオルゴールの様に繰り返している。 「好き?」 問い掛けられる言葉。 「好きよ?」 あやふやな、答え。 「本当に?」 少しだけ、疑いを持つその瞳に、愛情が消え失せる。 「…うん、本当…」 『好きだった。』 好きだった。きっと。 でも、どんな『好き』なの? 友達に対する、友愛の情? 親しい者に対する、親愛の情? 全てに対する、博愛の情? 異性に対する、恋情? 貴方に対する情は、一体何? 私に対する情は、一体何? 友愛の情と、親愛の情。 博愛の情と、恋情。 何者にも代え難い人に送る、愛情。 所持物に送る、愛情。 家族に送る、愛情。 友達に送る、愛情。 「愛してる…」 そっと、言葉に出して、胸の中で問い掛けて、初めて判った。 貴方に対する愛情は…、どれも当てはまらなかったんだ。 「愛してるよ」 でも今、口に出す言葉…。 私の目の前に居る貴方に、捧げる言葉。 だけど、まだ判らない。 愛って、何だろう…。 判らないのに、ただ貴方に伝えたいと思う。 『あなたを愛してる…』 |
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